第6回:実際に使ってみよう③ ― 問題解決と協力を生むスケールサーフィン

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― 全7回で学ぶ「視座を動かす思考法」―

この連載では、スケールサーフィン(チャンクアップ/チャンクダウン)について、全7回にわたって解説していきます。

目次

第1回:スケールサーフィンとは何か?
第2回:なぜスケールサーフィンが必要なのか? ― 話が噛み合わない理由
第3回:スケールの4段階 ― 視座の違いを整理する
第4回:実際に使ってみよう① ― 話が通じないときの対処法
第5回:実際に使ってみよう② ― コーチングでの使い方
第6回:実際に使ってみよう③ ― 問題解決と協力を生むスケールサーフィン
第7回:まとめ ― スケールサーフィンは技術ではなく在り方


第6回:実際に使ってみよう③ ― 問題解決と協力を生むスケールサーフィン

ここまでで、スケールサーフィン(チャンクアップ/チャンクダウン)の考え方や、「話が噛み合わない理由」「コーチングでの使い方」を見てきました。

第6回では、「問題解決」と「協力」を同時に生み出す場面で、スケールサーフィンがどのように使われているのかを見ていきます。

ケース設定

5S係活動に協力的でない中堅看護師Bさんと、師長との1on1

会話事例:係活動に協力的でない中堅看護師Bさん

師長

師長

「Bさん、ちょっといいですか?係活動にあまり参加できていないというふうに聞いたのですが、もし理由があるなら聞かせてもらってもいいですか?」

「理由って、別にないです。そもそも、5S係活動って意味あるんですか?私は自分の仕事はちゃんとしているので、それ以外に係活動までやらないといけない理由がわかりません。やりたい人だけやればいいんですよ。」

中堅看護師B

中堅看護師B

よくある失敗例

この場面で、よくやってしまいがちなのが次の対応です。

師長(悪い例)

師長

師長

「5S係活動は大切なんです!」
「みんな平等にやってるんです!」
「Bさんだけがやらなくていいわけがないじゃないですか!」

……これでは、Bさんの視座はさらに下がり、防御が強まります。

スケールサーフィンを使った会話

師長

師長

「そう思っていたんですね。理由を話してくれてありがとう。私も、係活動が面倒くさいなって思っていた時期はありました。忙しいと、そう感じてしまいますよね。ちなみに、5S係がどんな活動をしているかは知っていますか?」

「棚のケア物品を整理したり、ステーション内のカートの配置を見直したりですよね。私は棚の整理を頼まれてましたけど、今のままで全然使いやすいので、変える必要ないと思って、何も変えてません。」

中堅看護師B

中堅看護師B

師長

師長

「Bさん、何もしていないように見えるけど、しっかり係活動について考えていたんですね。考えた結果、”現状維持”を選んだということなんですね。」

「5Sなんて親の躾ですよ。私は厳しい両親に育てられたので、言われなくてもできていると思っています。いまさら係活動でやっても、身につくものじゃないです。」

中堅看護師B

中堅看護師B

師長

師長

「Bさんのその凛とした姿勢が、ご両親の教育だったと知れて、今日はそれだけでもよかったです。実際、みんながBさんのように何も言われなくても5Sができていたらいいですよね。」

「だから係活動なんて無意味なんですよ。」

中堅看護師B

中堅看護師B

師長

師長

「Bさんから見て、ここだけは何とかしたい、許せないと感じる部分はありませんか?」

「汚物室の床が、時々濡れているんですよ。患者さんに直接の害はないかもしれないけど、結局、私たちの靴が濡れて、それを廊下に持ち出すことになる。だから私が時々拭いているんです。

中堅看護師B

中堅看護師B

師長

師長

「それは本当にありがとうございます。正直、師長として恥ずかしいです。Bさん、十分に係活動されていますね。それも自然に。」

「もしよければですが、汚物室の床を濡れたままにしない、というテーマで5S係と一緒に取り組んでみませんか?3ヶ月限定で。効果がなければ、やめましょう。」

「無理だと思いますけど……3ヶ月だけですよ。」

中堅看護師B

中堅看護師B

師長

師長

「それで十分です。Bさんなりの考えで、5S係と一緒にやってみてください。」

「……わかりました。やってみます。」

中堅看護師B

中堅看護師B

解説:この場面でのスケールサーフィン

この会話では、チャンクを上下に行き来するスケールサーフィンが意図的に使われています。

① 最初は徹底的にチャンクダウンする(個人の視点へ)

最初に師長がしているのは、

  • 係活動の正しさを説くこと
  • 義務や平等を押し付けること

ではありません。

Bさん個人の価値観・感情・背景まで視座を下げて受け取ることです。

共感とは、同意ではありません。
「そう感じている」という事実を、評価せずに受け止めることです。

② チャンクアップして意味をずらす(再定義)

次に師長は、

  • 「何もしていない」→「考えた上での現状維持」
  • 「非協力的」→「自然に5Sを実践している人」

と、行動の意味を再定義します。

これは、Bさんの自己防衛を下げるためのチャンクアップです。

③ さらにチャンクアップして共通テーマへ(全体視点)

その後、話題は

  • 個人の好き嫌い
  • 係活動の是非

から、

「病棟全体の働きやすさ・安全性」

という共通テーマへ引き上げられます。

ここで初めて、「係活動の意義」が、Bさん自身の価値観と接続されます。

④ 最後は必ずチャンクダウンする(具体的行動へ)

最後に提示されるのは、

  • 汚物室
  • 床の濡れ
  • 3ヶ月限定

という、具体的で失敗しても大丈夫な一歩です。

高い視座のまま行動を求めると、人は動けません。
だからこそ最後は、必ずチャンクを下ろします。

この場面のスケールサーフィンまとめ

チャンクダウン個人の感情・価値観を受け取る
共感の姿勢 → 評価せず同じ視点に立つ
チャンクアップ → 行動の意味を再定義
さらにチャンクアップ共通できるテーマ
再チャンクダウン一歩踏み出せる行動

スケールサーフィンは、人を説得する技術ではありません。

人が動ける高さまで、視座を調整する技術です。

これが、問題解決と協力を同時に生むスケールサーフィンの本質です。


次回予告

次回は最終回、まとめ ― スケールサーフィンは技術ではなく在り方です。

ここまで6回にわたって、スケールサーフィンの考え方と使い方を見てきました。

最終回では、

  • スケールサーフィンを「使う」から「在る」へ
  • 日常で自然に使えるようになるために
  • 視座を動かせる人が、なぜ組織に必要なのか

という視点から、全体を振り返ります。

なかや たかと

なかや たかと

経歴
2007年杏林大学医学部付属病院看護専門学校卒業
2007年4月〜2011年3月杏林大学医学付属病院(救急、整形外科、緩和ケア)
2011年4月〜2015年3月札幌医科大学附属病院(救急)
2015年4月〜信州大学医学部附属病院(救急)

主な資格
正看護師、救急救命士、危険物取扱者乙4
(財)日本ライフセラピスト財団 認定コーチング、カウンセリング、恋愛アドバイザー、目標設定シニアアドバイザー
県DMAT、特定行為研修(術中麻酔管理パッケージ)

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