この記事で分かること
- 具体的な1週間のスケジュール例
- 補食の正しいタイミングと内容
- よくある質問への回答
- 成長サイクルチェックリスト
これまでのおさらい
3回にわたって、成長の3要素を解説してきました:
【第1回】中高生アスリートの成長戦略
- エネルギーは「基礎代謝→活動→成長」の順で使われる
- 食べられる量には限界がある
- 活動量を調整して成長エネルギーを確保する
【第2回】部活の練習量は本当に適切?
- 適度な運動が成長ホルモンを分泌させる
- 回復には48〜72時間かかる
- 積極的休息で回復を早められる
【第3回】中高生の成長は睡眠で決まる
- 成長ホルモンは睡眠中に大量分泌
- スマホが成長を止める
- 「休み」と「休息」は違う
今回は、これらを統合した実践編です。
1週間のスケジュール設計例
パターン1: 週6日練習の場合
曜日|活動内容|栄養|休息|ポイント
- 月|積極的休息(軽いジョグ20分+ストレッチ)|通常+補食1回|21時30分就寝|週末の疲労を抜く
- 火|中強度練習(90分)|通常+補食2回|22時就寝|回復完了、質を重視
- 水|中強度練習(90分)|通常+補食2回|22時就寝|集中して取り組む
- 木|軽め練習(60分)|通常+補食1回|22時就寝|水曜の疲労を考慮
- 金|調整練習(60分)|通常+補食1回|21時30分就寝|週末に備える
- 土|試合・練習試合|多め+補食3回|22時就寝|エネルギー重視
- 日|試合・練習試合|多め+補食3回|21時30分就寝|翌日の回復重視
パターン2: 週5日練習+完全休養2日の場合(推奨)
曜日|活動内容|栄養|休息|ポイント
- 月|完全休養|通常量|21時就寝|しっかり回復
- 火|中強度練習(90分)|通常+補食2回|22時就寝|フレッシュな状態
- 水|高強度練習(90分)|多め+補食2回|22時就寝|週の中心
- 木|積極的休息|通常+補食1回|22時就寝|水曜の回復
- 金|中強度練習(90分)|通常+補食2回|21時30分就寝|週末に備える
- 土|試合・練習試合|多め+補食3回|22時就寝|エネルギー重視
- 日|完全休養|通常量|21時就寝|次週に備える
補食の完全ガイド
補食の3つの目的
① 練習前のエネルギー補給
→ パフォーマンス維持
② 練習直後の回復(最重要)
→ 成長ホルモンの働きを最大化
③ 3食で足りない分の補充
→ 成長エネルギーの確保
① 練習前の補食(1〜2時間前)
目的: エネルギー切れを防ぐ
おすすめ:
- おにぎり1個(梅、鮭)
- バナナ1本
- カステラ2切れ
- エネルギーゼリー
NG:
- 脂っこいもの(消化に時間がかかる)
- 大量の食事(胃もたれする)
タイミング:
- 練習1〜2時間前が理想
- 直前(30分以内)なら消化の良いものだけ
② 練習直後の補食(30分以内)★最重要★
目的:
- 筋肉の修復開始
- 成長ホルモンの働きをサポート
- 疲労回復を早める
これがゴールデンタイムです!
運動後30分以内は:
- 栄養の吸収率が最も高い
- 成長ホルモンが分泌されている
- 筋肉が栄養を求めている
この時間を逃すと、回復効率が50%以下になります。
おすすめ:
- おにぎり1〜2個
- バナナ + 牛乳
- サンドイッチ
- プロテインバー + おにぎり
- カステラ + 牛乳
理想の組み合わせ:
炭水化物(おにぎり) + タンパク質(牛乳・プロテイン)
炭水化物:タンパク質 = 3:1が理想だけど とにかく食べられることが大事!
例:
- おにぎり2個(炭水化物60g) + 牛乳200ml(タンパク質7g)
- バナナ2本(炭水化物50g) + プロテイン(タンパク質15g)
③ 夕食前の補食(部活→帰宅が遠い場合)
状況: 部活終了18時 → 帰宅20時 → 夕食20時30分
この場合、練習後2時間以上空いてしまいます。
問題点:
- ゴールデンタイムを逃す
- 空腹が強くなりすぎる
- 夕食を食べ過ぎる
解決策:
部活直後(18時)に軽く補食 → 帰宅後は通常量の夕食
部活直後:
- おにぎり1個 + 牛乳
帰宅後(20時30分):
- 通常の夕食
これで:
- ゴールデンタイムに栄養補給 ✅
- 夕食の食べ過ぎを防ぐ ✅
- 睡眠の質が上がる ✅
補食の注意点
❌ やってはいけないこと
お菓子を補食にする
- ポテトチップス
- チョコレート
- クッキー
→ 脂質が多く、栄養バランスが悪い
ジュースだけ
- コーラ
- スポーツドリンクのみ
→ 糖質だけで、タンパク質がない
寝る直前のドカ食い
→ 睡眠の質が下がる、成長ホルモンが出にくい
✅ 補食の選び方
基本原則:
食事の延長として考える
良い補食:
- おにぎり
- バナナ
- サンドイッチ
- カステラ
- 牛乳
- ヨーグルト
- プロテインバー(市販)
ポイント:
炭水化物メインで、タンパク質もプラス
タンパク質は本当に必要か?
中高生のタンパク質の考え方
結論: 無理に高タンパク食にする必要はない
理由:
- 身長が伸びている間は、筋肉より骨の成長が優先
- 高タンパク食にこだわると、カロリー不足になりやすい
- 通常の食事で十分なタンパク質が摂れる
必要なタンパク質量
中高生アスリート: 体重1kgあたり1.2〜1.5g
例: 体重60kgの場合
必要量: 72〜90g/日
これは普通の食事で達成できます:
食品|タンパク質量
- 朝食(ごはん+納豆+卵+味噌汁)|20g
- 昼食(学食の定食)|25g
- 補食(おにぎり+牛乳)|10g
- 夕食(ごはん+肉or魚+副菜)|30g
- 合計|85g ✅
わざわざプロテインを飲む必要はありません。
高タンパク食が必要になるタイミング
身長が止まってから(年間1cm以下の伸び)
このタイミングで:
- 筋肉が肥大化しやすくなる
- タンパク質の必要量が増える
- 体重1kgあたり2g程度
それまでは:
- 炭水化物をしっかり摂る
- カロリー確保を優先
- 無理に高タンパクにしない
よくある質問Q&A
Q1. 朝ごはんを食べる時間がない
A: 前日の夜に準備 + 5分で食べられるものを
例:
- おにぎり(前日に握っておく)
- バナナ + ヨーグルト
- カステラ + 牛乳
最低限食べるべきもの:
バナナ1本 + 牛乳200ml(2分で完了)
どうしても無理なら:
登校中におにぎりを食べる
絶対にNG:
朝食抜き → 午前中のエネルギー不足 → 集中力低下
Q2. 3食しっかり食べているのに体重が増えない
A: 活動量がエネルギー摂取を上回っている
チェックポイント:
- 練習量が多すぎないか?(週6日以上の激しい練習)
- 補食を摂っているか?
- 睡眠時間は足りているか?(7時間以上)
対策:
- 補食を1日2〜3回に増やす
- 練習量を見直す(指導者と相談)
- 睡眠時間を30分増やす
Q3. プロテインは飲んだ方がいいですか?
A: 通常の食事で十分なら不要
プロテインが必要な人:
- 3食 + 補食でもタンパク質が足りない
- 身長が止まって筋肉をつけたい時期
- 食が細くて固形物を食べられない
注意点:
- プロテインはあくまで「補助」
- まずは食事を充実させる
- 飲みすぎは内臓に負担
おすすめの使い方:
練習直後の補食として
おにぎり + プロテイン
Q4. 身長が伸びません(中2・中3)
A: 3つのポイントをチェック
① 睡眠は足りているか?
- 8時間以上寝ているか?
- 入眠後90分の質は良いか?(スマホNG)
② カロリーは足りているか?
- 1日の必要カロリーを計算
- 活動量を考慮しているか?
③ 練習量が多すぎないか?
- 週6日激しい練習 → 成長エネルギー不足
- 積極的休息を入れる
それでも伸びない場合:
遺伝的な要因もあります。
焦らず、今できることを続けましょう。
Q5. ケガが多いです
A: 回復不足のサインです
チェックリスト:
- 筋肉痛が残ったまま練習している
- 睡眠時間が6時間以下
- 週1日しか休みがない
- ストレッチをしていない
一つでも当てはまれば、回復不足です。
対策:
- 積極的休息を週1回入れる
- 睡眠時間を7時間以上にする
- 練習前後のストレッチを15分ずつ
Q6. 部活と勉強の両立ができません
A: 時間管理 + 回復戦略
よくある失敗パターン:
部活 → 帰宅 → 夕食 → 眠気で勉強できない → 寝る
改善パターン:
部活 → 電車で仮眠15分 → 帰宅 → 夕食 → 勉強60分 → 21時30分就寝
ポイント:
- 電車で仮眠(脳の興奮を抑える)
- 夕食後の眠気を軽減
- 短時間集中(60分)
- 早く寝る(回復重視)
勉強時間より質を重視:
疲れた状態で2時間 < フレッシュな状態で60分
Q7. 友達と遊ぶ時間がない
A: 休息と遊びを設計する
NG例:
日曜: 朝〜夕方まで遊ぶ → 疲れる → 翌日に影響
OK例:
日曜: 午前中2時間遊ぶ → 午後は休息(散歩・読書) → 早く寝る
考え方:
- 遊び = 楽しいが回復ではない
- 遊んだ後は意識的に休息
- メリハリをつける
保護者の方へ:
「遊ぶな」ではなく「遊んだ後の休息を設計させる」
成長サイクルチェックリスト
毎朝チェック(1分)
- ぐっすり眠れたか?
- 筋肉痛は残っていないか?
- やる気は出るか?
- 朝ごはんを食べたか?
一つでも×があれば、今日は休息を多めに。
毎週チェック(5分)
栄養
- 3食しっかり食べたか?(5日以上)
- 補食を摂ったか?(練習後)
- 夕食が遅すぎなかったか?(21時前)
運動
- 激しい練習は週3日以内か?
- 積極的休息を入れたか?
- 完全休養は週1日以上あったか?
休息
- 7時間以上寝たか?(5日以上)
- スマホを21時に終了できたか?
- 意識的に休息したか?(散歩・ストレッチ)
7個以上✅なら合格!
5個以下なら改善が必要。
保護者の方へ〜家庭でできるサポート〜
① 補食の準備
平日の朝:
- おにぎりを2個握る(練習前・練習後用)
- 持たせるだけでOK
買い置き推奨:
- バナナ
- カステラ
- プロテインバー
- まんじゅうやどら焼きなど
② スマホ管理
ルールを作る:
- 21時になったらリビングに置く
- 親が預かる
- スクリーンタイムを親が設定
「かわいそう」ではなく「成長のため」と伝える
③ 早寝の環境づくり
21時以降:
- テレビを消す
- リビングの照明を暗くする
- 家族全員が静かに過ごす
親が見本を見せる:
子どもだけに強制しても続きません。
家族全員で早寝を実践しましょう。
④ 食事のサポート
夕食は20時までに:
仕事で遅くなる場合:
- 子どもだけ先に食べさせる
- 温め直せるものを用意
量より質:
- 無理に食べさせない
- 食べやすいものを用意する
指導者の方へ〜これからの部活動〜
練習量より回復サイクル
従来の発想:
練習量 = 強さ
これからの発想:
練習の質 × 回復 = 強さ
週の設計例
- 月曜: 積極的休息(レギュラー) + 通常練習(控え)
- 火曜: 完全休養
- 水曜: 中強度練習(90分)
- 木曜: 積極的休息(全員)
- 金曜: 調整練習(60分)
- 土日: 試合
これで:
- レギュラーの回復が確保される
- 控え選手の練習量が増える
- ケガが減る
- パフォーマンスが上がる
文武両道の時代
これからの強豪校は:
- 練習時間2時間以内
- 週休2日
- 学業成績も優秀
勉強できない選手は、自己管理能力が低い
→ スポーツでも伸びない
文武両道を前提とした部活運営を。
まとめ〜間違った努力を正しい努力に〜
成長の3要素
- 栄養: 食べられる量には限界がある → 活動量を調整
- 運動: 適度な刺激 → 48〜72時間の回復
- 休息: 睡眠7時間以上 + スマホ管理
最も大切なこと
- 「頑張る」だけでは成長しない
- 「回復する」ことで成長する
今日からできること
中高生の皆さんへ
- 睡眠時間を記録する
- スマホを21時に終了する
- 補食を練習後30分以内に摂る
保護者の方へ
- おにぎりを準備する
- スマホ管理に協力する
- 家族全員で早寝する
指導者の方へ
- 週の練習設計を見直す
- 積極的休息を導入する
- 文武両道を前提とする
最後に
この4回の記事で伝えたかったことは:
間違った努力を、正しい努力に変えよう
ということです。
多くの中高生が:
- たくさん食べようと頑張る
- 毎日激しい練習を頑張る
- 睡眠時間を削って勉強を頑張る
でも、これは間違った努力です。
正しい努力は:
- 活動量を調整して、成長エネルギーを確保する
- 回復サイクルを回す
- 睡眠を最優先する
これであなたの成長は最大化されます。
頑張ってください!
参考資料・もっと知りたい人へ
推奨書籍
- 『スタンフォード式 最高の睡眠』西野精治
- 『スポーツ栄養学』寺田新
- 『中高生のためのやさしいスポーツ医学ハンドブック 』曽我部晋哉

これで全4回のシリーズは完結です。
あなたの成長を心から応援しています!
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