【第2回】部活の練習量は本当に適切?中高生の成長を左右する回復48〜72時間の科学

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この記事で分かること

  • 運動で成長ホルモンが出るメカニズム
  • どんな運動が効果的で、どこからがやりすぎか
  • 48時間・72時間の回復時間の科学的根拠
  • 「積極的休息」の具体的な実践方法

運動は成長のスイッチを入れる

前回、成長には「栄養・運動・休息」の3要素が必要だと説明しました。
今回は「運動」の役割について深掘りします。

運動の役割は2つ:

  • 成長ホルモンの分泌を促す(スイッチを入れる)
  • 骨・筋肉に刺激を与える(どこを強化するか伝える)

逆に言えば、適切な運動なしでは、栄養をとっても休息をとっても成長しにくいのです


運動と成長ホルモンの関係

成長ホルモンとは?

成長ホルモンは脳下垂体から分泌されるホルモンで、以下の働きをします:

  • 身長を伸ばす(骨端線を刺激)
  • 筋肉を作る(タンパク質合成)
  • 骨を強くする(骨密度向上)
  • 脂肪を分解する
  • ケガの回復を早める

運動でなぜ成長ホルモンが出るのか?

筋肉に刺激が入ると:

  • 脳が「体を強化する必要がある」と判断
  • 成長ホルモンを分泌
  • 筋肉・骨・腱が強化される

重要: 成長ホルモンは運動中より、運動後にピークを迎えます
だから、運動後の栄養補給と休息が超重要なのです。


どんな運動が効果的か?

✅ 成長ホルモンが出やすい運動

中〜高強度の運動(息が上がるが、長時間は続かないレベル)

具体例:

  • ダッシュ(全力の80%程度)
  • インターバル走
  • 筋トレ(8〜12回で限界になる負荷)
  • 短時間の全力プレー(15〜30分)

特徴:

  • 心拍数が上がる
  • 乳酸がたまる感覚がある
  • 終わった後に「やった感」がある

❌ あまり効果的でない運動

  • ダラダラした長時間練習
  • 同じ動作の反復だけ

これらも意味はありますが、成長ホルモンの分泌という点では効率が悪いです。


やりすぎるとどうなるか?

ここが最も重要です。
高強度運動を毎日回復なしで続けると…

コルチゾール(ストレスホルモン)が増える

  • 筋肉を分解する
  • 成長を止める
  • 免疫力を下げる

慢性疲労状態になる

  • 常に体がだるい
  • 集中力が続かない
  • イライラしやすい

成長ホルモンへの反応が鈍る

  • 同じ運動をしても効果が薄くなる
  • 成長効率が落ちる

これが「オーバートレーニング症候群」です。


回復時間の科学的根拠

回復にかかる時間

運動強度|回復時間|具体例

  • 軽い運動|24時間|軽いジョグ、キャッチボール
  • 中程度の練習|48時間|通常の部活(2時間程度)
  • 激しい運動|72時間|試合、筋肉痛が残る練習

なぜ48〜72時間かかるのか?

  • 筋肉の微細損傷の修復: 24〜48時間
  • グリコーゲン(エネルギー)の回復: 24〜48時間
  • 腱・靱帯のダメージ回復: 48〜72時間
  • 神経系の疲労回復: 48〜72時間

つまり、激しい練習の翌日に全力練習をすると、回復していない状態で再度ダメージを与えることになります。


現在の部活動の問題点

よくあるパターン

  • 月曜: 完全休養(前週末の試合から回復)
  • 火曜: 通常練習
  • 水曜: 通常練習
  • 木曜: 通常練習
  • 金曜: 通常練習
  • 土曜: 練習試合
  • 日曜: 試合

月曜: 完全休養(回復)
火曜: 通常練習 ← ここが問題


何が起きているか?

レギュラー陣(土日フル出場)

  • 月曜: 回復
  • 火曜: まだ完全に回復していない ← 72時間経っていない
  • 水〜金: 疲労が蓄積
  • 土日: 疲れた状態で試合

結果:

  • パフォーマンス低下
  • ケガリスク増加
  • 成長エネルギーが常に不足

控え選手

  • 土日はあまり疲れていない
  • 月曜で完全回復
  • 火曜: 最高のパフォーマンスで練習

結果:
レギュラーと控えの「回復度の差」が毎週開いていく


解決策: 積極的休息(アクティブレスト)

積極的休息とは?

完全に休むのではなく、軽く動くことで回復を早める方法です。

なぜ効果があるのか?

軽い運動をすると:

  • 血流が良くなる → 老廃物の除去が進む
  • 筋肉の緊張がほぐれる → コリが取れる
  • 副交感神経が優位になる → リラックス

具体的な方法

強度の目安: 心拍数120以下、会話できる程度

  • 軽いジョグ(15〜20分)
  • 散歩・ウォーキング(30分)
  • ストレッチ・ヨガ(20〜30分)
  • 軽いキャッチボール・ドリブル
  • プールでウォーキング(水圧で血流促進)
  • 自転車を軽く漕ぐ

やってはいけないこと:

  • ダッシュ
  • 筋トレ
  • 試合形式の練習

新しい1週間の設計例

改善案: 積極的休息を組み込む

月曜: 【積極的休息】

  • レギュラー陣: 軽いジョグ20分 + ストレッチ30分
  • 控え選手: 通常練習(技術・戦術)

火曜: 【完全休養】

  • 全員休み

水曜: 通常練習(中強度)
木曜: 通常練習(中強度)
金曜: 軽めの調整(試合に向けた準備)
土曜: 練習試合
日曜: 試合


この設計のメリット

レギュラー陣の回復が確保される

  • 月曜: 積極的休息で回復促進
  • 火曜: 完全休養で回復完了
  • 水曜: フレッシュな状態で練習

控え選手の練習量が増える

  • 月曜に技術・戦術を磨ける
  • レギュラーとの差を縮められる

チーム全体のケガが減る

成長エネルギーが確保される


練習の質を上げる

「練習量を減らしたら弱くなるのでは?」

この不安に答えます。

量より質の時代

従来の考え:
練習量(時間) = 強さ

これからの考え:
練習の質 × 回復 = 強さ


質を上げる方法

目的を明確にする

  • 今日は何を身につける練習か?
  • ダラダラした練習をしない

集中力を最大化する

  • 短時間で集中する
  • 疲れた状態で長時間やらない

フィードバックを即座に与える

  • 良いプレーをすぐに褒める
  • 修正点をその場で伝える

練習量を個別化する

  • 全体練習だけでなく、選手個々の練習量を管理する
  • 選手の成長曲線を把握し、練習量を個々に調整する

例:

3時間ダラダラ練習 < 90分集中練習 + 30分振り返り


指導者の方へ〜練習を削る勇気〜

僕も指導者の立場なら、練習量を減らすのは怖いです。
でも、これからの時代に勝ち残るチームは:

  • 回復サイクルを理解している
  • 選手の成長を最優先する
  • 科学的根拠に基づいて設計する

練習を削ることは、弱くなることではありません。
むしろ、強くなるための戦略です。


すでに取り入れている強豪校

一部の強豪校では:

  • 週休2日制
  • 積極的休息の導入
  • 練習時間の短縮(2時間以内)

を実践し、結果を出しています。


今日からできること3つ

① 自分の回復度をチェックする

毎朝、以下をチェック:

  • 筋肉痛はあるか?
  • 疲れは残っているか?
  • やる気は出るか?

一つでも「悪い」があれば、回復が足りていません。

② 積極的休息を週1回入れる

完全休養の日を1日、積極的休息に変える。
20分の散歩やストレッチから始めてみよう。

③ 指導者に提案する

「回復を重視した練習設計」について話し合う。
この記事を見せて、科学的根拠を共有する。


まとめ

  • 運動は成長ホルモンのスイッチを入れる
  • 中〜高強度の運動が効果的
  • 回復には48〜72時間かかる
  • やりすぎは成長を止める
  • 積極的休息で回復を早められる
  • 練習の質を上げることで、量を減らせる

次回は「休息」について徹底解説します。
睡眠・スマホ・休み方の科学を知れば、あなたの成長スピードは劇的に変わります。

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なかや たかと

なかや たかと

経歴
2007年杏林大学医学部付属病院看護専門学校卒業
2007年4月〜2011年3月杏林大学医学付属病院(救急、整形外科、緩和ケア)
2011年4月〜2015年3月札幌医科大学附属病院(救急)
2015年4月〜信州大学医学部附属病院(救急)

主な資格
正看護師、救急救命士、危険物取扱者乙4
(財)日本ライフセラピスト財団 認定コーチング、カウンセリング、恋愛アドバイザー、目標設定シニアアドバイザー
県DMAT、特定行為研修(術中麻酔管理パッケージ)

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