第1回では、チームとグループの違いについて書きました。
第2回では、チームに必要なものは「居場所」と「役割」であるという話をしました。
では、その「居場所」と「役割」は、自然に生まれるものなのでしょうか。
答えは、半分YESで半分NOだと思っています。
チームは確かに、逆境や共通の経験の中から自然に生まれることがあります。
しかし、その環境を意識的に作る人がいなければ、チームはなかなか生まれません。
その役割を担うのが、リーダーです。
リーダーの仕事は、先頭を走ることではありません。
メンバーを引っ張ることでもありません。
私が考えるリーダーの仕事は、メンバーにとっていい「土」になること。
そして、メンバーが自立できる状態をいかに作るか、ということです。
サーバントリーダーシップという考え方
リーダーシップ研究者のロバート・グリーンリーフは、1970年に「サーバントリーダーシップ」という概念を提唱しました。
サーバントとは「奉仕する者」という意味です。
従来のリーダー像——先頭に立ち、指示を出し、引っ張っていく存在——とは正反対の発想です。

サーバントリーダーはまず、メンバーのために何ができるかを考えます。
メンバーが成長しやすい環境を整え、力を発揮できる条件を作ることをリーダーの使命とします。
私がリーダーになった時に考えるのも、まさにこれです。
自分がメンバーにとってどのような力になれるか。
メンバーの長所を伸ばすこと、そしてメンバーが生き生きと成長しやすい「土」になること。
それが私の使命だと思っています。
居場所を作るのはリーダー
私の職場では、年度はじめに自分がリーダーとなるグループが発表されます。
だいたい6〜8人のグループです。
まず私がやることは、メンバーそれぞれとのラポールの強度を自分なりに見極めることです。
まだ関係が浅いメンバーと積極的に話をするようにする。
そして、メンバー同士が自然に話せるような場を、年間を通じて意図的に設けます。
なぜなら、意識して作らなければ、メンバー間の交流はなかなか生まれないからです。
チームの土台は「居場所」です。
ここにいていいと思えること。
自分の存在が受け入れられていると感じられること。
この感覚がなければ、人は本当の力を発揮できません。
しかし、居場所は自然には生まれません。
誰かがミスをした時。
意見がぶつかった時。
思い通りにいかなかった時。
その場の空気を決めるのは、リーダーです。
ミスを責める空気を作るのか、学びに変える空気を作るのか。
意見の違いを対立にするのか、議論に変えるのか。
その姿勢を、メンバーは必ず見ています。
そしてリーダー自身が、自分の弱さや限界を正直に見せること。
「自分にも苦手なことがある。だから助けてほしい」というメッセージをリーダー自身が体現できるかどうか。
それが、メンバーにとって最大の安心になります。
チームの心理的安全性は、リーダーの態度で決まると言ってもいいと思います。
役割を見つけるのもリーダー
人は、自分の役割がわかった時に力を発揮します。
「自分はこのチームに必要だ」と思えた瞬間に、人は主体的に動き始めます。
しかし、役割は最初から明確ではありません。
メンバー自身も、自分の強みに気づいていないことがあります。
だからこそリーダーには、メンバーの強みを見つける視点が必要になります。
以前、こんなメンバーがいました。
臨床能力はそれほど高くはありませんでしたが、係活動になると人が変わったように生き生きとしていました。
臨機応変に対応するよりも、ルールが正しく適用されているかを確認し、誰よりも忠実にその任務を果たそうとする。
その実直さが、係活動の場では誰よりも輝いていたのです。
私はそれに気づいてから、係活動をより頑張れるように応援しました。
そして、もしその中で好きな分野が見つかったら、認定看護師としてその分野で飛躍できるよう目指してみてはどうかとアドバイスしました。
今では、そのメンバーは認定看護師になっています。
強みの形は人それぞれです。
リーダーはメンバーを観察し続け、その強みを見つけ出す観察力と根気が必要です。
そして見つけた時には、「ここはあなたに任せたい」と伝える。
信頼して、任せる。
その瞬間に、その仕事はただの作業ではなく、役割になります。
役割を得た人は、その期待に応えようとします。
そしてその先に、その人自身の未来が開けていきます。
長所と短所は、表と裏
以前、リーダー会でこんなことを言われたことがあります。
あるメンバーの声が大きく、笑い声が他の患者への配慮に欠ける、クレームも来ている、と。
しかし私は、そのことを本人には伝えませんでした。
自分の目の前でそういう場面があれば、その場で伝えるかもしれません。
しかし、実際に見てもいない場面のことを「そう言われているから気をつけなさい」と伝えることは、しません。
それが信頼関係を壊す原因になりかねないからです。
なぜなら、その元気さ、声の大きさ、笑い声は、そのメンバーの長所だからです。
確かに、それを苦痛に感じる人もいるかもしれません。
しかし同時に、その元気さに救われている人も、明るさをもらっている人も、必ずいます。
私自身、そう感じることがあるからです。
そのメンバーに、元気さを抑えて仕事をしてほしいとは思いません。
だからリーダー会ではこう伝えました。
「もしそういう方がいれば、私が代わりに謝罪に行きます。言ってください」と。
長所が短所になることはあります。
しかし、だからといって両方を削ってしまうのは勿体無い。
リーダーとしてできることは、短所になる側面を自分が補ってあげること。
それがチームとして機能する方法なのだと思っています。
リーダーは「土」である
私はよく、リーダーの仕事を植物を育てることに例えます。
台風が来ている時には、飛ばされないように根をしっかり支える。
順風満帆な時には、スクスクと成長できるよう応援したり、ただ見守ったりする。
疲れて倒れそうな時には、そっと添え木で支える。
リーダーが作るのは、そういう「土」です。
すべてを決める存在ではなく、メンバーが育ちやすい環境を整える存在。
むしろ、すべてを自分でやろうとするリーダーのもとでは、チームは育ちません。
そして面白いことに、本当に強いチームは、リーダーがいなくても機能します。
なぜなら、メンバー同士が支え合える関係になっているからです。
自分の知らないところで、メンバー同士が動き出していたとしたら。
それは嘆く場面ではなく、チームが自走し始めたという、喜ばしい瞬間です。
いい土があれば、植物は自ら育っていきます。
そしてそれこそが、私たちが作るべきチームの姿なのだと思います。
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