チームに必要なものは何か——「居場所」と「役割」

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前回、チームとグループの違いについて書きました。
では、チームを作るためには何が必要なのか。
私は「居場所」と「役割」の二つだと思っています。

まず、私が実際に経験した話をさせてください。

私はDMAT(災害派遣医療チーム)として、災害現場に派遣されたことがあります。
メンバーは、災害発生後に院内で即席で編成されます。
普段は部署も違い、顔を一度見たことがあるかどうか、名前すら覚えていない人もいます。
そんな状態で、災害現場に向かうわけです。

しかし、現地に向かう道中で変化が起きます。
何気ない会話から始まり、食品の買い出しをしながら、何が好きで何が苦手か、食べたいものを選ぶのか日持ちするものを選ぶのか、計画的な人か適当な人か——そういったことを話し合いながら、自然とお互いのことを知っていきます。
被災地に着く頃には、名前と顔と大まかなキャラクターがわかっている。

そして活動を通じてお互いを信頼し、寝泊まりを共にして、本当に命を預け合えるような関係になり、72時間の活動を終えて帰路につきます。

出発した時はただのグループでした。
しかし帰る頃には、間違いなくチームになっていました。

その後、院内で顔を合わせると、他のスタッフとは明らかに違う親密感があります。
「あの人の言うことなら大丈夫」という信頼関係が、ずっと続いています。
わずか72時間を一緒に過ごしただけなのに。

これが、チームというものだと思っています。

平凡なタスクをこなすだけなら、グループで十分かもしれません。
しかし、過酷な任務を成し遂げるためにはチームが必要です。
そして逆説的ですが、そういう試練を共に乗り越えてこそ、初めて本当のチームになれる。
チームとは、目的があって作るものではなく、逆境の中で生まれるものなのかもしれません。

「居場所」があるから、人は力を出せる

ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授は、「心理的安全性」という概念を提唱しました。
チームの中で自分の意見や失敗を安心して表現できる状態のことです。
彼女の研究では、心理的安全性の高いチームほど、学習し、イノベーションを起こし、高い成果を出すことが示されています。

私が言う「居場所」は、この心理的安全性と近い概念ですが、もう少し広い意味で使っています。
そこにいてもいいと心の底から思えること
自分がその場に存在していることを、自然に受け入れてもらえているという感覚です。

DMATの話に戻ると、あの道中での何気ない会話こそが、居場所を作っていたのだと思います。
食べ物の好みや、選び方の癖。
そんな些細なことを知るだけで、人は「この人のことがわかる」と感じます。
そしてその感覚が、信頼の入り口になります。

居場所を作るために、プライベートなことを何でも共有する必要はありません
しかし、どんな価値観を持っているのか、どんな考え方をする人なのか。
そういったことを、本人が開示できる範囲で互いに知っていることは大切です。

しかし今の時代、プライベートを重視する風潮が強まり、業務外でお互いを知る機会はかなり減っています。
だからこそ、チームを作る時には、互いのことを知る時間を意識的に作っていく必要があります
飲み会を開けと言っているわけではありません
ランチミーティングを設けてお互いのことを話す機会にする、就業の1時間前に業務を切り上げてレクリエーションの時間を作る——実行可能な範囲で工夫しているリーダーはたくさんいます

人は、相手のことを知らなければ信頼できません
そして信頼がなければ、困難な場面でぶつかり合うこともできません。
「最後には必ずわかり合える」という信頼関係がなければ、本気でぶつかり合えないのです。
だからこそ、「ここにいていいんだ」と感じられる居場所が、チームの土台になります。

「役割」があるから、人は力を使える

心理学者のデシとライアンが提唱した「自己決定理論」によれば、人は自分で選び、自分で引き受けた行動に対して最も高いモチベーションを発揮します。
逆に、外から押し付けられた行動は、たとえ同じ仕事でも意欲が大きく下がります。

これは、役割においても同じです。
役割とは、単なる仕事の分担ではありません
自分がこのチームの中でどんな使命を持っているのか
その役割を周りからも期待されていると感じられること。
そして、それを自ら能動的に引き受けている状態です。

やりたくない仕事をただ押し付けられている状態は、役割とは言えません。
そこには主体性がなく、責任も誇りも生まれないからです。

だから私は、メンバーそれぞれの強みを見つけることをとても大切にしています。
判断が早い人。
状況を整理するのがうまい人。
周囲に気を配れる人。
最後まで粘り強くやり抜ける人。

その強みを見つけたら、そこに思いきり頼る
信頼して任せる。
「あなたが必要だ」と伝え続ける
任された仕事を、その人が自分の役割としてやり切る。
この繰り返しが、チームをさらに強くしていきます。

まとめ

居場所があるから、人は安心して力を出せる。
役割があるから、人は自分の力を使うことができる。

この二つがそろった時、人はただのメンバーではなく、チームの一員になります

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なかや たかと

なかや たかと

経歴
2007年杏林大学医学部付属病院看護専門学校卒業
2007年4月〜2011年3月杏林大学医学付属病院(救急、整形外科、緩和ケア)
2011年4月〜2015年3月札幌医科大学附属病院(救急)
2015年4月〜信州大学医学部附属病院(救急)

主な資格
正看護師、救急救命士、危険物取扱者乙4
(財)日本ライフセラピスト財団 認定コーチング、カウンセリング、恋愛アドバイザー、目標設定シニアアドバイザー
県DMAT、特定行為研修(術中麻酔管理パッケージ)

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