― 全7回で学ぶ「視座を動かす思考法」―
この連載では、スケールサーフィン(チャンクアップ/チャンクダウン)について、全7回にわたって解説していきます。
目次
第1回:スケールサーフィンとは何か?
第2回:なぜスケールサーフィンが必要なのか? ― 話が噛み合わない理由
第3回:スケールの4段階 ― 視座の違いを整理する
第4回:実際に使ってみよう① ― 話が通じないときの対処法
第5回:実際に使ってみよう② ― コーチングでの使い方
第6回:実際に使ってみよう③ ― 問題解決と協力を生むスケールサーフィン
第7回:まとめ ― スケールサーフィンは技術ではなく在り方
第7回:まとめ ― スケールサーフィンは技術ではなく在り方
ここまで、スケールサーフィンについて「理解 → 実践 → 応用」と段階的に見てきました。
第7回のまとめでは、あらためて一番大切なことをお伝えします。
スケールサーフィンは、テクニックではありません。
「どう振る舞うか」という在り方そのものです。
スケールサーフィンの基本構造
スケールサーフィンは、感覚的なものに見えますが、実はとてもシンプルな構造をしています。
大きく分けると、次の3段階です。
① まずは必ず、相手の元へ降りていく
② 共通の思い・テーマまで視座を上げる
③ 最後に、もう一度チャンクダウンする
① まずは必ず、相手の元へ降りていく
スケールサーフィンの初期段階で、必ずやることは一つです。
相手の元に降りる。
相手の視座に立ち、同じ世界を見て、理解しようとする。
- 相手には何が見えているのか
- 何が不公平に感じているのか
- どこに引っかかりがあるのか
- 何を守ろうとしているのか
この段階では、
- 正しいかどうか
- 組織としてどうあるべきか
- 解決策は何か
は、一切考えません。
ただひたすら、
「そう見えているんですね」
「その世界に立ったら、そう感じますよね」
という姿勢で降りていきます。
ここができていない状態で、どんな正論を語っても、人は動きません。
② 共通の思い・テーマまで視座を上げる
十分に降りて、理解が成立したあとで、ようやく次に進みます。
それがチャンクアップです。
- なぜそれが嫌なのか
- 何を大切にしているのか
- 本当は、どうなればいいと思っているのか
ここで目指すのは「正解」ではありません。
共通できる思い・テーマに辿り着くことです。
- 働きやすい環境にしたい
- 無駄な負担を減らしたい
- 患者・スタッフにとって安全でありたい
この段階で、初めて同じ考え方・同じ見え方になります。
③ 最後に、もう一度チャンクダウンする
そして、最も重要なのが最後です。
必ず、また降ります。
- 今日から何ができそうか
- どこまでなら動けるか
- 誰と一緒ならやれそうか
ここまでチャンクダウンして初めて、相手は「考えた」ではなく「動ける」状態になります。
ポイントは、
最初に降りた場所と最後に降りた場所は、同じ階層でも中身が違う
ということです。
だから、行動が変わります。

視座と視野を整理する
ここで改めて、視座と視野について整理します。
視座とは
視座とは、見ている階層の高さです。
- 現場の一場面
- 係活動全体
- 病棟全体
- 組織の目的
どの階層から物事を見ているか。それが視座です。
視野には2つの意味がある
「視野が広い」という言葉は、実は2種類あります。
1つ目は、各階層で見えている範囲
(同じ視座でも、どれだけ細かく見えているか)
2つ目は、全体として見えている量
(いくつの視座を行き来できるか)
視野が広いとは何か
整理すると、こう表せます。
視野(見えている量) = 視座(階層の数) × 各階層で見えている範囲
ここで大事なのは、
各階層での視野を広げる(経験・知識を増やす)よりも、視座を変えられるようになることのほうが、圧倒的に簡単で即効性がある
という点です。
各階層で見えている範囲が多少狭くても、視座を上下に行き来できるだけで、見えている量は一気に増えます。
結果として、
「あの人は視野が広い」
と言われる状態になります。
スケールサーフィンは「在り方」である
スケールサーフィンとは、
- 上から指示することでもなく
- 下から迎合することでもありません
必要に応じて、自然に行き来できる在り方です。
相手の元に降り、
共通の場所まで上がり、
また相手が動けるところまで降りる。
この往復運動ができる人は、
- 話が通じる
- 対立を生まない
- 協力を引き出せる
結果的に、現場を前に進める人になります。
最後に

スケールサーフィンは、特別な才能でも、魔法の技術でもありません。
相手の世界に降りる勇気と、一緒に考えようとする姿勢。
それだけで、十分に使えます。
このシリーズが、
誰かの現場を少し楽にし、
誰かの対話を少し前に進める
きっかけになれば幸いです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。