― 全7回で学ぶ「視座を動かす思考法」―
この連載では、スケールサーフィン(チャンクアップ/チャンクダウン)について、全7回にわたって解説していきます。
目次
第1回:スケールサーフィンとは何か?
第2回:なぜスケールサーフィンが必要なのか? ― 話が噛み合わない理由
第3回:スケールの4段階 ― 視座の違いを整理する
第4回:実際に使ってみよう① ― 話が通じないときの対処法
第5回:実際に使ってみよう② ― コーチングでの使い方
第6回:実際に使ってみよう③ ― 問題解決と協力を生むスケールサーフィン
第7回:まとめ ― スケールサーフィンは技術ではなく在り方
第3回:スケールの4段階 ― 視座の違いを整理する
チャンクアップやチャンクダウンは、理論的にはどこまでも続けることができます。
しかし、実際の会話や現場で無限に階層を意識するのは現実的ではありません。
そのため、ここでは視座を4つの階層に整理して説明します。
できるだけイメージしやすく解説していきます。
スケールの4段階(高い視座から)
ビジョナリー(視座:最も高い)
プランメーカー(視座:高い)
ディレクター(視座:中)
エキスパート(視座:低い/具体的)

※これは上下関係でも、優劣でもありません。
あくまで「見る高さ・思考のクセ・役割の違い」です。
① ビジョナリー
(看護部長・副看護部長レベル)
例え:天体望遠鏡
- 病院・病棟全体を俯瞰する
- 大きな方向性やビジョンを描く
- 長期的な展望を重視する
ビジョナリーは、かなりアバウトで、思いつきに近い発想をします。
「これ、やってみたらいいんじゃない?」
「あ、これ面白そう!」
「将来的には、こうなったらいいよね」
と、突如アイデアを投げてくることも少なくありません。
細かい設計や実行方法は、まだ詰めきれていないことも多いですが、まずは方向性や可能性を提示する。
それがビジョナリーの役割です。
周囲から見ると「思いつき」「無責任」に見えることもありますが、実際には誰よりも未来を先に見ている人です。
② プランメーカー
(副師長・主任・教育担当レベル)
例え:望遠鏡
- 全体像を整理する
- データや事実に基づいて計画を立てる
- 実行計画と進捗管理を行う
プランメーカーは、設計・計画・調整をすべて把握していたいタイプです。
- 他部門との調整
- スケジュール
- 人・物・お金の動き
こうした要素を一度すべて頭の中で整理しないと気が済まない。
そのため、
- 自分の知らないところで何かが始まる
- 突然「これ、やることになりました」と言われる
こうした状況を強く嫌います。
結果として、あらゆることに首を突っ込もうとする人に見えることもあります。
しかしそれは、「管理したい」からではなく、失敗させたくない・破綻させたくないという思いからです。
③ ディレクター
(師長・係長レベル)
例え:虫眼鏡
- 現場を把握する
- 専門的内容を理解して指示を出す
- 実際の進行を推進する
ディレクターは、現場を動かす監督役です。
特徴的なのは、自分の成果よりも、
- スタッフの体調
- スタッフの表情
- 働きやすさ
に強く意識が向く点です。
- 無理していないか
- 疲れていないか
- 気持ちよく働けているか
こうしたことを常に気にかけ、
- 環境を整える
- 上司に要望を掛け合う
- 現場の声を吸い上げる
とにかく、自分のためではなく、周りが働きやすいように調整する。
現場とビジョンの橋渡し役。
それがディレクターです。
④ エキスパート
(スタッフレベル)
例え:顕微鏡
- ディテールに強い
- 正確で丁寧な作業ができる
- ルーティンワークも高い質でこなす
エキスパートは、細部へのこだわりが非常に強いタイプです。
- 手順
- 技術
- クオリティ
一つ一つの仕事に責任を持ち、「ここは、もう少し良くできるはず」と自分の仕事を磨き続けます。
全体像や理念よりも、「今、自分の手元にある仕事」を確実に仕上げることに集中します。
周囲からは「細かい」「融通がきかない」と思われることもありますが、現場の質を担保しているのはエキスパートです。
あなたは、どの視座から話し始めますか?
ここで一度、考えてみてください。
- 自分は、どの視座から会話を始めやすいか
- 普段、どの高さで物事を見ていることが多いか
たとえば、「来月から新しい取り組みを始めます」と言われたとき、
- 「それって、どういう意味があるの?」(ビジョナリー)
- 「スケジュールは?誰が担当?」(プランメーカー)
- 「スタッフの負担は大丈夫?」(ディレクター)
- 「具体的な手順は?」(エキスパート)
どの質問が、最初に浮かびますか?
話が合うと感じる相手は、多くの場合、同じ視座で話し始める人です。
役職と視座は、必ずしも一致しない
ここでは便宜的に、各視座に役職名を当てはめました。
しかし実際には、
- 本来持っている得意な視座
- 仕事で求められる視座
が一致しないことは、よくあります。
そしてこのズレは、疲れやすさに直結します。
得意でない視座で戦うと、疲れる
本来はプランメーカータイプなのに、常にビジョナリーとして振る舞う必要がある。
あるいは、エキスパートタイプなのに、全体を俯瞰する役割を求められる。
こうした状況では、どうしても労力がかかり、疲れやすくなります。
視座タイプは「使い分ける」「補い合う」

そんなときは、得意なタイプの人に手伝ってもらうことをおすすめします。
たとえば、実はプランメーカータイプなのに師長になった場合。
ビジョナリータイプの副師長や主任と病棟目標を一緒に考える時間を作ってみてください。
きっと、ビジョナリーは気持ちよくビジョンづくりに参加してくれます。逆に、ビジョナリータイプが主任になった場合は、プランメーカータイプのスタッフに具体的な計画づくりを任せてみる。
得意な人に任せることは、「丸投げ」ではなく「適材適所」です。
視座を理解すると、成果が変わる
視座タイプを理解し、うまく使い分け、補い合えるようになると、
- 無駄な摩擦が減る
- 労力が小さくなる
- 成果が大きくなる
可能性があります。
次回予告
次回は、この4つの視座がズレたとき、会話がどのように噛み合わなくなるのかを、第2回のMRSAカンファレンスを使って解説します。
そして第5回で、そのズレをどう修正するかに入っていきます。