― テクニックの前に、テクニックに頼りすぎない ―

僕は常々、コーチはテクニックに頼りすぎないでほしいと思っています。
ただ一方で、最低限のテクニックが使えなければ、コーチングが効果的にならないのも事実です。
そこでこれから数回に分けて、実際のコーチングでよく使われるテクニック(技術)を整理してお伝えします。
コーチングの3つのテクニック
コーチングで扱うテクニックは細かく分ければたくさんありますが、大きく分類すると次の3つです。
- 聴くテクニック(傾聴/アクティブリスニング)
- 承認する(受け入れる)テクニック
- 質問するテクニック(視点・視座・視野を変える武器)
今回は、①の聴くテクニックについてです。
「傾聴」って結局なに?
コーチング本の多くは、まず「傾聴」から始まります。看護の世界でも、傾聴はよく聞くワードですよね。
でも、「傾聴って何ができていたら傾聴と言えるの?」と聞かれて明確に答えられる人は、実は少ないと思います。
広辞苑を引くと、「耳を傾けて聞くこと。熱心に聞くこと。」と書いてあります。
……耳を傾ける? 熱心に聞く?
それって精神論? となりやすいのも、正直なところです。
そこで今回は、「傾聴」という言葉の中身を、テクニックとして分解していきます。
ゼロポジション:判断せずに聴く
ゼロポジションとは、相手の意見を肯定も否定もしない。自分の価値観を入れずに聴く(受け入れる)ことです。
これが意外と難しい。
話を聴きながら、つい「それ違うんじゃ…」「そこ、誤解してるな…」と、頭の中で判断してしまう。
でも、なぜゼロポジションが必要かというと、クライアントの世界観を理解するためです。
クライアントからは現状がどう見えていて、どう解釈されているのか。それを知ることが、コーチの最初の仕事だからです。
信号の例で考えてみる
たとえば、クライアントが横断歩道の前で立ち止まっている。コーチからは信号が青に見えている。
「青なんだから、進めばいいのに」と思いながら話を聴く。あるいは我慢できずに「早く進んで」と言ってしまう。
でも、それではなぜ進まないのかが分かりません。
- クライアントには赤に見えているのかもしれない
- 青でも「青=進め」を知らない世界で育ったのかもしれない
- もっと先から猛スピードの車が見えているのかもしれない
- そもそも信号という概念が曖昧なのかもしれない
ゼロポジションとは、悟りを開いて無になることではありません。
「どんな世界が見えているんだろう?」と好奇心を持って聴く姿勢のことです。
ペーシング/ミラーリング:同期する・映す
次は、ペーシングとミラーリングです。厳密に区別しようとするとややこしいので、ここではまとめて扱います。
- 悲しい表情で話しているなら、こちらも少し表情を落として聴く
- 楽しそうなら、こちらも笑顔で聴く
- 頷く人なら、頷くタイミングを合わせる
これはペーシングの技術です。
ミラーリングは、さらに動作を”鏡のように”映すイメージです。
- 相手が頭に手をやったら、こちらも軽く同じ動きをする
- 鼻に触れたら、こちらも軽く触れる
- 涙を拭ったら、こちらも目元に手をやる
ただし、露骨にやると不信感を招きます。自然に、さりげなくがポイントです。
なぜ必要なのか
これがなぜ必要かというと、クライアント側は「この人、ちゃんと聴いてくれている」「共感してくれている」という安心感・一体感を得やすいからです。
そしてもう一つ。同じような姿勢・動作をとるだけで、こちらも相手の感情や思考を理解しやすくなります。
「共感」との違い(ここ大事)
ここでよく誤解されますが、コーチはクライアントの考え方や感情に、必ずしも共感しなくていい。大事なのは、ゼロポジションで聴きながら、理解することです。
共感しすぎて感情に巻き込まれてしまうと、コーチングになりません。
ただし、「聴いている」「受け取っている」という姿勢は見せる必要がある。
そのための技術として、ペーシングやミラーリングは有効です。
相槌/オウム返し:聞いていますの合図
会話を黙って聴き続けるのは、意外と難しいですよね。
だから多くの人は自然に、
- 「うんうん」
- 「それで?」
- 「へえ!」
- 「なるほど」
といった相槌を打っています。
コーチングでは、さらにオウム返し(相手の言葉を繰り返す)を意図的に使います。
具体例
クライアント:「昨日◯◯さんに怒られて、めっちゃ腹立った」
コーチ:「めっちゃ腹立ったんですね」
クライアント:「だって私は何もしてないのに、みんなの前で怒るんですよ」
コーチ:「何もしてないのに…」
(または)「みんなの前で怒ったんですね」
言葉を繰り返しているだけに見えますが、クライアント側は「感情を受け取ってくれている」と感じやすく、安心感や信頼感が増します。
また、繰り返されることで、クライアント自身が冷静になったり、違う角度から状況を見られるようになったりもします。
どの言葉を拾って返すか。そこにも、コーチの技術が出ます。
まとめ:聴くテクニックとは
「聴く」というテクニックには、
・コーチの思考(ゼロポジション)と、
・態度・仕草(同期・合図)
がセットで含まれています。
すでに日常でやっている方も多いと思いますが、意識して練習し、可能なら他者からフィードバックをもらうと上達します。
僕自身も「今、全然聞いてなかったですよね」と後輩に言われて、ハッとすることがあります。
自分のことは、自分が一番知っているようで、実は一番知らない。そんなこともあります。
一緒に練習の日々を過ごしていきましょう。
次回は、承認するテクニック編をお話しします。
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