正直に言うと、私は最初から診療看護師(NP)を肯定していたわけではありません。
看護師には看護師の役割があり、医師には医師の役割がある。
それぞれの専門性があるからこそ医療は成り立つのであって、その境界を曖昧にするような資格は中途半端ではないか——当時の私は、診療看護師を「プチドクター化」と捉え、不要な資格だとさえ考えていました。
長野で見えた地域医療の現実
その考えを大きく変えたのが、長野県で地域医療の現実を肌で感じた経験です。
地方では、医師の働き方改革やタスクシフトの推進が進む一方で、そもそもの医師数の偏在が深刻です。
日中なら対応できることも、夜間や休日になると一気に難しくなる。
同じ病態でも、都市部ならすぐに介入できることが、地域では数時間遅れることもある。
その“時間差”が、そのまま患者さんの予後の差になる現実を、私は何度も目の当たりにしてきました。
救急や集中治療の現場に長くいると、
「あと30分早ければ」
「あと1時間早く評価と介入ができれば、結果が変わったかもしれない」
という症例に出会います。
それは誰か一人の努力不足ではありません。
構造として、すでに限界がきているのです。
だからこそ思いました。

このまま一看護師として現場で奮闘し続けるだけでは、この構造そのものには太刀打ちできない、と。
目の前の一人を救うことはできても、地域全体の時間格差・医療格差を埋める存在にはなれない
その危機感が、私を診療看護師という道へと向かわせました。
視座が変わると、問いが変わる
この考えに至った背景には、自分自身の視座の変化があります。
若い頃は、自分にできるケア、自分の所属する救命センター、その日の業務をどう回すかという視点で精一杯でした。
しかし経験を重ねるにつれ、病院の使命、地域の基幹病院としての責任、医療圏の中で自施設が果たすべき役割まで考えるようになりました。
そうすると、自然に問いが変わってきました。

「自分が何をできるか」ではなく、
「この地域医療において、自分はどんな存在であるべきか」
この問いに向き合ったとき、診療看護師は“中途半端な資格”ではなく、
地域医療の隙間を埋めるための実践知の資格
だと捉え直すようになりました。
看護師のキャリア構造にも一石を投じたい
もう一つ、強く感じていることがあります。
看護師のキャリア構造そのものの問題です。
現状、看護師は管理職にならなければ給与が上がりにくく、しかもそのポストは限られています。
その結果、本来現場で最も価値を発揮している実践者が報われず、現場を離れざるを得なくなることも少なくありません。
急変時に空気を変えられる人、若手に背中を見せている人、患者さんに最も近い場所で支え続けている人。
そうした“実践のエキスパート”が、給与面でも役割面でも正当に評価される仕組みがなければ、医療現場は長期的に崩れていくと思っています。
診療看護師は、その閉塞感に一石を投じる存在にもなり得ます。
管理職だけが上がるキャリアではなく、現場力そのものが価値になるキャリアモデル。
その道筋を、自分自身が証明したい。
私が目指す未来
地域医療の未来のために。
患者さんが住む場所や時間帯によって不利益を受けないために。
そして、現場の実践者が正当に報われる、看護の新しいキャリアをつくるために。
私は、診療看護師を目指しています。🌱
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